LOGIN竜帝国で迎えた最初の夜、俺は客室と呼ぶには扉の錠が頑丈すぎる部屋へ入れられた。
窓には鉄格子こそないものの、青白く光る細い文字が何重にも刻まれ、触れようとすると「逃亡者を焼却する」という物騒な意味が伝わってくる。扉の外には二人の近衛兵が立ち、部屋の四隅には監視用と思われる水晶まで置かれていた。
家具は立派で、寝台も国境砦で使っていたものより柔らかい。それでも、外へ出る自由がなければ、豪華な牢と呼ぶのが正しいだろう。
「少なくとも、雪原で凍死するよりはいいか」
誰に聞かせるでもなく呟き、俺は机の上へ広げられた転移門の記録に目を落とした。
女帝ガルディアが与えた猶予は、明日の正午までである。それまでに古代転移門が動かない原因を突き止め、修復方法を示せなければ、俺は人間王国の間者として処刑される。
しかも、リシアが俺を皇城へ連れ込んだ責任まで問われるらしい。
俺一人の命ならば、どこかで諦めることもできたのかもしれない。しかし、助けた相手まで巻き添えにするとなれば、簡単に失敗するわけにはいかなかった。
記録には、百年以上にわたって転移門を調査した竜族の術者たちの報告が残されている。魔力の供給は正常で、門の石材にも大きな損傷はない。それにもかかわらず、起動させようとすると魔法が逆流し、術者だけを門の外へ弾き飛ばすという。
文字そのものを見なければ、俺にも原因は分からない。
報告書を何度読み返しても同じ結論へ戻り、そろそろ目を休めようとしたとき、扉の向こうから言い争う声が聞こえた。
「殿下、さすがに夜も更けております。人間の男が一人でいる部屋へお入りになるなど、いくら監視のためとはいえ、外聞がよろしくありません」
「私の所有物を、私が確認して何が悪い。そもそも、私が近くにいなければ、この者が妙な行動を取ったときに止められぬだろう」
「でしたら、我々も室内へ同行いたします」
「おまえたちがいれば、まともに話ができない。廊下で待っていろ」
「しかし、殿下は人間嫌いでいらっしゃいますし、男を私室へ招かれたご経験もないのです。万が一、あの人間が不埒な真似をいたしましたら……」
「私が人間一人に何をされるというのだ!」
その怒声とともに扉が開き、青い寝間着の上へ外套を羽織ったリシアが入ってきた。
扉の外にいる近衛兵たちは、最後まで納得していない様子だったが、皇女本人に命じられては従うしかないらしい。扉が閉まる寸前、その一人が俺へ「少しでも妙な動きをすれば殺す」という視線を向けてきた。
「歓迎されていないのは分かっていたけれど、夜に女性が部屋へ来ただけで殺されそうになるとは思わなかった」
「おまえの心配をしているのではない。私の身を案じているのだ」
「それは分かっている。ただ、昨日から殺すという言葉を聞きすぎて、そろそろ挨拶の一種に思えてきた」
「慣れるな。自分の命をもう少し大切にしろと、何度言えば理解する」
リシアは向かいの椅子へ腰を下ろし、机に広げられた記録へ目を向けた。昼間に着ていた軽鎧姿とは違い、今は銀色の髪を後ろで緩く束ねている。顔色は幾分よくなったものの、竜殺しの鎖で負った傷は、まだ完全には癒えていないようだった。
「傷は大丈夫なのか。夜中に歩き回るより、休んだほうがいいんじゃないか」
「その言葉を、そのまま返そう。おまえも血を失ったばかりなのに、いつまで記録を読んでいるつもりだ」
「命がかかっているからな。俺だけならともかく、あなたの立場まで悪くなると聞いた」
「私のことは気にするな。おまえが失敗しても、皇女の地位を失う程度で済む」
「その程度という言葉の使い方は、たぶん間違っている」
「私にとって皇位や地位は、生まれたときに与えられたものにすぎぬ。命と比べれば、大した価値ではない」
「本当にそう思っているなら、どうして皇城へ戻ってきたんだ。俺を連れて遠くへ逃げることだって、あなたの力ならできたはずだろう」
リシアは答えに詰まり、わずかに視線を逸らした。
魂から伝わってきたのは、帝国を捨てることなど考えられないという強い責任感と、皇位を望んでいると知られれば欲深い女だと思われるのではないかという迷いだった。
地位に興味がないという言葉は、完全な嘘ではない。彼女が欲しいのは冠そのものではなく、自分の力で守れるものを増やす立場なのだろう。
「言っておくが、今聞こえたことは口にしない。さっき余計なことを言わないよう約束したからな」
「それなら、聞こえたことまで報告するな。黙っていればよいものを、どうしてわざわざ言う」
「黙っていると、あなたから何か聞こえたことを隠しているようで落ち着かない。俺も、まだこの力をどう扱えばいいのか分かっていないんだ」
「おまえは二年間、その力を使っていたのではないのか」
「魔物の感情や魔法の意味は聞いてきた。でも、特定の人の本音が、これほど明確に聞こえるのは初めてだ。あなた以外の竜族からは何も聞こえないし、女帝陛下の心の声も分からなかった」
「私だけ、なのか」
「今のところは」
リシアの頬がわずかに赤くなった。
『私だけに聞こえるというのは、どういう意味なのだ。魂語は伴侶となる者同士にのみ届くと伝えられているが、私はこの男と出会ったばかりだ。しかも相手は人間で、戦う力もなく、妙なところで頑固で、私の言うことをほとんど聞かない。それなのに……』
そこまで聞こえたところで、俺は机上の報告書へ視線を落とした。
本人が続きを考えないよう必死になっている以上、俺まで意識を向けるべきではない。そもそも、伴侶という言葉の意味を詳しく尋ねれば、また氷の剣を突きつけられる可能性がある。
「それで、転移門について何か分かったのか」
リシアは自分の動揺をごまかすように尋ねた。
「記録を読む限りでは、魔力の供給にも石材にも問題はない。術式のどこかで、命令の意味が壊れている可能性が高い。ただし、文字を直接見なければ断定できない」
「ならば、今から見に行くぞ」
「今から?」
「明日の正午まで待ってから調べ始めるつもりだったのか。古代転移門は、皇城の北側にある旧塔へ保管されている。私が一緒なら、夜でも立ち入りを許可させられる」
「傷は大丈夫だと言い張りながら、歩くたびに痛みをこらえている人を連れ回すのは気が進まない」
「私を連れていかなければ、監視対象であるおまえは、この部屋から一歩も出られぬぞ」
「それなら、ゆっくり歩いてくれ。俺も、昨日まで雪原で死にかけていたから、急がれると置いていかれる」
「おまえも体調が悪いのなら、最初からそう言え」
「言ったところで、処刑の期限を延ばしてもらえるのか」
「それは……難しいだろうな」
「だったら、言っても仕方がない」
「おまえのそういうところが、腹立たしいのだ。相手が何もしてくれないと決めつけ、助けを求める前から諦めるな。少なくとも私には、おまえを休ませるか、支えながら歩くことくらいできる」
「皇女殿下に支えてもらって歩いたら、廊下の近衛兵に殺される理由が増えそうだ」
「そのときは、私が守る」
即座に返された言葉には、何の迷いもなかった。
俺は少し驚き、リシアの顔を見た。彼女も自分が口にしたことに気づいたらしく、慌てて言葉を付け足す。
「勘違いするな。おまえは私の所有物なのだから、勝手に傷つけられては困るという意味だ」
「その扱いは、いつまで続くんだ」
「おまえの身分を保証する別の方法が見つかるまでだ。我慢しろ」
「所有物と呼ばれるたびに反論する権利くらいは残しておいてくれ」
「好きにしろ。ただし、ほかの者がいる前で何度も文句を言うな。私の立場がなくなる」
「分かった。二人きりのときだけ、しつこく言うことにする」
「なぜ、しつこく言うことが前提なのだ」
結局、俺たちは互いに肩を貸すことなく、どちらも平気なふりをしながら旧塔へ向かった。
◇
皇城の北端に建つ旧塔は、現在使われている宮殿よりもはるかに古かった。
壁は黒い石で造られ、窓はほとんどない。塔の内部には人の姿を取った竜族でも余裕をもって通れる広い階段があり、その先の地下空間に、古代転移門が安置されていた。
門は高さ十メートルを超え、二本の柱と上部をつなぐ弧状の石材から成っている。表面には無数の始原語が刻まれているが、その大半は長い歳月によって摩耗し、補修された部分には新しい文字が重ねられていた。
俺たちを迎えたのは、白い髭を胸元まで伸ばした老竜族だった。紫色の長衣をまとい、手には幾つもの水晶を埋め込んだ杖を持っている。
「リシア殿下、このような夜更けに、なぜ人間をお連れになったのです」
「明日の正午までに原因を調べさせるよう、母上から命じられた。時間が惜しいので、今夜から始める」
「この門は、竜帝国最高の術者たちが百年以上調べ続けてきたもの。人間ごときに何が分かるとお考えですか」
「分かるかどうかを確かめるために来た。ダルゼン老、しばらく我々だけにしてほしい」
「なりません。人間が門へ細工を施せば、帝国全土の転移網が危険にさらされます。私には古代遺構を管理する責任がございます」
老術者ダルゼンは俺を見ようともせず、杖で床を二度叩いた。すると門の前に半透明の壁が現れ、近づく道を塞いだ。
「俺が門に触れないよう見張っていてもらって構わない。ただ、近くで文字を見せてほしい。遠くからでは、意味の流れを正確に拾えない」
「人間の要求を聞く必要はない。この門が動かぬ理由なら、既に判明している。大地を流れる魔力が、百年前より弱くなったためだ。門を起動できぬのは、術式ではなく供給量の問題にすぎない」
「報告書では、以前の三倍の魔力を流しても起動しなかったと書かれていた。それでも供給量が足りないのなら、昔の竜族は現在の三倍以上の魔力を日常的に使っていたことになる。そんな記録がほかに残っているのか」
ダルゼンは、ようやく俺へ目を向けた。
「報告書を読んだ程度で、我々の研究へ口を挟むつもりか」
「研究を否定したいわけじゃない。魔力が原因だという結論を出した根拠を知りたいだけだ。記録を見る限り、門へ流した魔力の量を増やす実験は何度も行われているのに、文字の意味を再確認したという報告が一つもなかった」
「始原語は既に失われた言語だ。完全に読み解ける者など存在しない。それゆえ、過去の資料と術式の構造から意味を推測してきた」
「なら、その推測が間違っている可能性もある」
「人間、おまえは自分が何を言っているのか分かっているのか。門の補修に携わったのは、帝国史に名を残す大術者たちだ。その功績を、おまえのような若造が侮辱することは許されぬ」
ダルゼンが怒る理由は理解できた。
彼は長い年月、この門を調べてきたのだろう。今さら現れた人間に、研究の前提が間違っていると言われれば、自分の人生まで否定されたように感じるかもしれない。
しかし、感情へ配慮することと、誤りを放置することは別だった。
「過去の術者が努力していなかったとは思っていない。読めない言葉を、限られた資料から解釈しようとしたこと自体は立派だと思う。ただ、どれほど偉い人が書いた文章でも、間違っているものは間違っている。そこを認めなければ、門はこの先も動かない」
「ならば証明してみせろ。大術者たちが、どの文字を誤ったというのだ」
ダルゼンは半透明の壁を消した。
俺はリシアとともに転移門の前へ進み、表面へ刻まれた始原語を見上げた。
近づいた瞬間、何百もの声が同時に頭へ流れ込んできた。
『道をつなげ。遠き者を招け。門の許可を持つ者を受け入れよ。異なる地を一つの場所として重ねよ』
門の土台となる命令は正常だった。
問題は、後から補修された上部の文字にある。摩耗した部分を補うために追加された文章が、本来の命令とは逆の意味を発している。
『道を閉ざせ。遠き者を退けよ。門の許可を持つ者を拒絶し、侵入しようとする者を起点へ返せ』
「原因は魔力不足じゃない。門は今も、命令どおり正確に動いている」
「何を言っている。この門は、百年以上、一度も転移を成功させておらぬのだぞ」
「だからだ。門は転移を拒絶しろと命じられている。起動しないのではなく、起動するたびに術者を外へ弾き出すよう、補修時の文章で命令されているんだ」
ダルゼンの顔色が変わった。
「そのようなはずはない。補修に用いた文章は、許可なき侵入者を拒むためのものだ」
「本来の文章には、確かに『許可なき者を拒め』とあった。でも、補修された部分では、『許可を持つ者を拒め』に変わっている。否定を示す文字が、対象へかかる位置を間違えているんだ」
「たった一文字の位置が違うだけで、命令全体が逆になるというのか」
「たった一文字だからこそ、誰も間違いに気づかなかった。魔力を増やせば増やすほど、門は強い力で使用者を拒絶する。報告書にあった逆流現象は、故障ではなく、門が命令を忠実に実行した結果だ」
ダルゼンは門へ駆け寄り、補修された文字を杖の水晶で照らした。
自分には読めない文字を前にして、それでも俺の指摘が正しいか確かめようとしている。その姿には意地や怒りが残っていたが、研究者としての誠実さもあった。
「仮におまえの解釈が正しいとして、どう修復する。石を削って文字を刻み直せば、術式全体が崩れる可能性がある」
「命令を削る必要はない。黒い鎖と同じように、現在の文章へ正しい意味を重ねればいい。ただし、今回は俺の血だけでは足りない。この門を動かすには、竜族の魔力が必要になる」
「私の魔力を使え」
リシアが迷わず答えた。
「まだ傷が治っていないだろう。門を修復するだけの魔力を出せるのか」
「出せるかどうかではない。出すのだ。失敗すれば、おまえも私も処分される。ここで力を惜しむ理由はない」
「また、命を粗末にするなと言い合うことになりそうだな」
「今回は違う。おまえ一人に無理をさせぬため、私も力を出すと言っている。おまえは先ほど、一人で何もかも抱え込むなと私に言われたばかりだろう」
「正確には、助けを求める前から諦めるなと言われた」
「同じことだ。言葉の細かな違いを持ち出して、話を逸らすな」
リシアは俺の隣へ立ち、右手を差し出した。
その手を取ればよいのだろうが、俺はすぐには触れられなかった。
「何をしている。早くしろ」
「あなたの魂語は、触れるともっと強く聞こえる可能性がある。黒い鎖を書き換えたときも、途中から自分の考えとあなたの声の区別がつかなくなりかけた」
「だからといって、手をつながず魔力を渡す方法はない。聞こえたことを他言しないという約束を守ればよい」
「後で怒らないか」
「内容による」
「それでは安心できない」
「私だって、考えていることをすべて聞かれるのは恥ずかしいのだ。それでも、おまえを処刑させるよりはましだと言っている。少しくらい察しろ」
口にした後で、リシアは自分が何を言ったのか気づき、頬を赤くした。
魂からは、『なぜ私は、この男の命を守りたいなどと自分から言っているのだ』という混乱が伝わってくる。
「分かった。聞こえても、必要なこと以外は忘れるよう努力する」
「努力ではなく忘れろ」
「人間の記憶は、命令されて消せるほど便利じゃない」
俺はリシアの手を取った。
指先が触れた瞬間、冷たいと思っていた彼女の手から、驚くほど強い熱が流れ込んでくる。竜族の魔力は炎のように荒々しく、制御しなければ俺の腕を通っただけで体の内側を焼き尽くしかねない。
同時に、リシアの魂語がこれまで以上に鮮明になった。
『手をつないだだけなのに、なぜこれほど落ち着かないのだ。遥人の手は、人間にしては大きい。雪原では冷たかったが、今は温かい。いや、そのようなことを考えている場合ではない。集中しろ、リシア』
忘れろと言われても、これほどはっきり聞こえては難しい。
俺は表情を変えないよう努めながら、彼女の魔力を転移門へ導いた。
「俺には魔力がほとんどない。だから、流す量はあなたが調整してくれ。俺は言葉の道筋だけを作る」
「任せろ。ただし、無理だと思ったらすぐに言え。黙って倒れることは許さぬ」
「あなたも同じだ。俺に聞こえているから、平気なふりをしても分かるぞ」
「それは卑怯ではないか」
「便利と言ってほしい」
転移門へ青銀の光が広がり、無数の始原語が浮かび上がった。
俺は誤った文章を消そうとせず、その上へ本来の意味を重ねていく。門の許可を持つ者を拒むのではなく、許可を持たない者を拒む。その違いを正しく伝えるため、対象と否定の位置を入れ替え、古い術式全体とのつながりを修正する。
しかし、途中で魔力の流れが乱れた。
リシアの傷が開いたらしく、握っている手から一瞬力が抜ける。
「リシア、止めるぞ」
「続けろ。この程度で止めれば、最初からやり直しになる」
「血が出ている。傷が治ったというのは嘘だったのか」
「治っていないとは言っていない。完全ではないだけだ」
「それを普通は、治っていないと言うんだ」
「今さら言葉の定義で争うな。おまえは通訳なのだから、私が続けろと言っている意味くらい理解しろ」
「理解している。だから反対しているんだ。言葉どおり続ければ、あなたが倒れる」
「では、魂の声を聞け。私は、おまえを失敗させたくない。おまえを助けるためなら、この程度の傷は惜しくない。これでも続けられないと言うのか」
リシアの口から出た声と、魂から届く声が初めて完全に重なった。
俺は彼女の覚悟を拒むことが、必ずしも優しさではないと気づいた。
「分かった。ただし、俺が終わりだと言ったら、そこで魔力を止めてくれ。それ以上は絶対に続けないと約束してほしい」
「約束する。おまえも、限界になる前に言え」
「それでは、もう一度だ」
俺たちは互いの手を強く握り直した。
リシアの魔力が、今度は暴れることなく俺の言葉へ沿って流れる。俺が道を示し、彼女が世界を動かす力を与える。どちらか一人では成立しない魔法が、二人の間で少しずつ形になっていった。
「道をつなげ。遠き者を招き、許された者を受け入れよ。異なる地を重ね、その距離を越えさせろ」
始原語が金色に輝き、門の内側に光の膜が生まれた。
最初は水面のように揺れていた光の向こうへ、やがて雪のない草原と、赤い屋根を持つ砦が映し出される。
門が、百年ぶりに開いた。
ダルゼンは杖を取り落とし、信じられないものを見るように立ち尽くしている。
「北方領の第三砦だ。本当に、つながっている……」
「人を通す前に、安全を確認したほうがいい。向こう側と連絡を取る方法はあるか」
「伝令用の水晶を使う。だが、その前に一つ確かめさせろ」
ダルゼンは床へ落ちた杖を拾い、俺の前へ立った。
先ほどまでの敵意は残っていたが、その表情には別の感情が混じっている。
「本当に、補修された文字が間違っていたのか。百年以上、我々は動かぬ門へ魔力を注ぎ続け、故障の原因を見つけられなかったというのか」
「間違っていたのは事実だ。でも、門が壊れていないと確認し続けた人たちがいたから、俺は文字に原因があると絞り込めた。過去の研究が全部無駄だったわけじゃない」
「慰めのつもりか」
「違う。俺も、自分がいなければ勇者一行が成り立たないと思っていた。でも、追放された瞬間、自分がしてきたことまで無意味だったように感じた。誰かに否定されたからといって、積み上げた時間まで消えるわけじゃないと、俺自身が思いたいだけだ」
ダルゼンは長い髭へ手をやり、しばらく黙っていた。
「人間に教えられるとは、長生きしてみるものだな。しかし、次からはもう少し年長者を敬った言い方を覚えろ。内容が正しくとも、相手を怒らせれば伝わるものも伝わらぬ」
「気をつけます。よく同じことを言われるので」
「言われているのに直しておらぬのか」
「直そうとは思っています」
隣のリシアが、小さくため息をついた。
「こやつの『直そうと思っている』は、今のところ信用しないほうがよいぞ」
「ひどいな。所有者なら、もう少し高く評価してくれてもいいだろう」
「その呼び方を自分から使うな。あとで文句を言うつもりだろう」
門の向こう側から、異変に気づいた北方領の兵士たちが集まり始めた。やがて転移門の管理者同士で連絡が取れ、武装した竜族の兵士が慎重に光の膜をくぐってくる。
兵士が無事に旧塔の床へ足をつけると、周囲にいた術者たちから驚きと歓喜の声が上がった。
百年以上動かなかった転移門は、確かに修復された。
◇
翌朝、俺は再び謁見の間へ立たされた。
今度は両手を拘束されていない。扱いが改善したと思いたいが、左右にはヴァルガンをはじめとする近衛兵が並んでおり、逃げられないことに変わりはなかった。
玉座に座るガルディア女帝の前で、ダルゼンが転移門の修復について報告する。
「如月遥人の解釈に誤りはございませんでした。転移門が動かなかった原因は、百二十七年前の補修において否定を示す始原語の位置を誤ったことにございます。昨夜、第三皇女殿下の魔力を用いて命令を修正し、北方第三砦との転移に成功いたしました」
広間に集まった貴族たちから、どよめきが起こった。
昨日、今すぐ処刑しろと叫んでいた者たちは、気まずそうに視線を逸らしている。それでも、人間を信用できないという考えまで、一晩で変わったわけではない。
女帝は騒ぎが収まるのを待ち、俺へ問いかけた。
「人間、報酬を求めるか」
「生かしてもらえることが報酬だと、昨日聞きました」
「それだけで満足するのか。あの門が再び動けば、帝国の物流と軍事は大きく変わる。望むなら、相応の金を与えよう」
「それなら、働いた分の報酬は受け取りたいです。ただし、俺を所有物ではなく、一人の人間として雇ってください」
リシアが小さく咳払いをした。
彼女の立場を悪くしたいわけではないが、この話だけは曖昧にしたくなかった。
「リシアがおまえを所有物と宣言したからこそ、昨日の時点で処刑を免れたのだぞ」
「理解していますし、助けてもらったことには感謝しています。でも、命を守るためだったとしても、所有物のまま働き続けることはできません。仕事を任せるなら、内容と報酬を先に決めて、嫌なら断る権利を認めてほしいのです」
「自分が交渉できる立場だと思うか」
「思っていません。ただ、何も言わずに受け入れれば、俺を追放した人たちと同じ関係を、ここでも繰り返すことになる。それだけは避けたいと思っています」
広間が静まり返った。
俺の言葉を不敬だと思った者もいるだろう。ヴァルガンは今にも止めたそうな顔をしている。
ガルディア女帝は長い間、俺を見つめていたが、やがて玉座の肘掛けへ頬杖をついた。
「面白い。命を握られてなお、自分の扱いへ注文をつけるか」
「命を握られているからこそです。ここで黙れば、この先も黙るしかなくなります」
「よかろう。おまえを罪人として処刑することは保留し、竜帝国の客分としてリシアの監督下に置く。行動範囲は制限するが、仕事を命じる際には内容と報酬を明らかにし、正当な理由があれば断ることも認めよう」
「ありがとうございます」
「ただし、おまえが帝国へ害をなした場合、その処分は監督者であるリシアにも及ぶ。それを忘れるな」
女帝は俺から娘へ視線を移した。
「リシア、この人間をおまえの宮へ置け。衣食住と身分を保証し、その能力について詳しく調べよ」
「私の宮へ、ですか」
「自分の所有物だと宣言したのであろう。まさか、世話だけ母へ押しつけるつもりではあるまいな」
「その言葉をいつまでも持ち出さないでください。あれは、この者を守るために必要だっただけです」
「ならば、最後まで責任を持つことだ」
ガルディア女帝の口元には、娘をからかうような笑みが浮かんでいた。
どうやら人間嫌いの皇女が、見知らぬ男を自分の宮へ住まわせることは、女帝にとってかなり珍しい出来事らしい。
◇
その日の夜、俺はリシアの宮に用意された客室へ移された。
以前の部屋と違って扉に外から錠はなく、窓にも焼却魔法は刻まれていない。まだ監視役の侍従はいるが、少なくとも囚人から客人へ近づいたようだった。
ようやく眠れると思い、寝台へ腰を下ろしたところで、扉が三度叩かれた。
「遥人、起きているか。少し話がある」
入ってきたリシアは、いつになく深刻な表情をしていた。
「転移門についてなら、今日はもう無理だ。昨日からほとんど眠っていないから、続きは明日にしてほしい」
「転移門の話ではない。おまえの身分に関わる、さらに重大な問題だ」
「また処刑の話か」
「違う。むしろ、おまえを処刑させないための話だ。今日、おまえの力が帝国中へ知られたことで、私以外の皇族や貴族も、おまえを手に入れようと動き始める。客分という曖昧な立場のままでは、私がおまえを守り続けることができない」
「それなら、正式な宮廷通訳にでもしてもらえないのか」
「役職だけでは足りぬ。私より上位の権限を持つ者から命じられれば、おまえを引き渡さなければならなくなる。誰にも奪われず、常に私のそばへ置いておける身分が必要だ」
リシアは何度か言葉を選び直すように唇を動かし、それでも適切な言い方を見つけられなかったらしく、最後には諦めたように俺を見た。
「遥人。おまえには、私の婚約者になってもらう」
あまりにも予想外の言葉に、俺はしばらく返事ができなかった。
リシアは平然とした表情を保っていたが、魂からは大混乱した声が聞こえている。
『違う、これは政治上の必要から出した提案だ。私がこの男をそばに置きたいからではないし、ほかの女に渡したくないと思ったわけでもない。そもそも、なぜほかの女のことまで考えたのだ、私は』
処刑を免れたと思ったその日の夜、俺は人間嫌いの竜皇女から、今度は婚約を申し込まれていた。
第10話 勇者が俺を連れ戻しに来た晩餐会を中断して謁見の間へ向かう途中、俺は何度も右手を握り直していた。寒いわけではない。それでも指先が、雪原へ捨てられたあの夜と同じように震えている。神崎怜央と再会すると聞いた瞬間から、記憶の中に埋めたはずの光景が、嫌になるほど鮮明に蘇っていた。古代神殿の壁画を解読し、人間王国が休戦協定を破って竜帝国へ侵攻したという事実を突き止めた日のこと。俺がその内容を怜央へ報告すると、彼はしばらく黙り込み、やがて困ったように笑った。「遥人、お前の能力が便利なのは分かってる。だけど、世の中には正しいからって公表しちゃいけないこともあるんだよ」あのときの俺は、まだ怜央を仲間だと思っていた。だからこそ、真実を国王へ報告すべきだと食い下がり、王国の戦争に正当性がないことを説明した。翌朝、古代神殿の解読は怜央の功績になり、壁画の内容は「竜族による人間侵略の証拠」へと書き換えられていた。そして俺は、虚偽の報告で勇者一行を混乱させた反逆者として拘束され、その日のうちに国境の雪原へ捨てられた。怜央は最後まで俺の目を見なかった。けれど、その場から立ち去ろうともしなかった。俺が何度名前を呼んでも、少し離れたところで腕を組み、すべてが終わるまで黙って見ていた。殴られたことより、荷物を奪われたことより、あの沈黙のほうが今も胸の奥に残っている。「遥人」隣を歩くリシアが、前を向いたまま俺の名を呼んだ。今夜の彼女は晩餐用の礼装姿で、俺たちが揃いの装いだと誰の目にも分かる。先ほどまで俺の料理を気にしていた女性と同一人物とは思えないほど、その横顔は冷たく整っていた。「会いたくないのなら、私が一人で追い返すわ。母上も、あなたに出席を強制するおつもりはないはずよ」「会わずに済ませたら、たぶん俺は後で後悔する。あのとき言えなかったことを、今度こそ自分の口で言わなくちゃならない」「そう。なら止めないけれど、無理に強がる必要はないわ。怖いなら怖いと言いなさい。怒っているなら、怒っていると言ってもいい。竜族の宮廷では、人間の王国ほど
第9話 竜族の食卓は命懸け「最初に言っておくけれど、今夜の晩餐会では三度までなら失敗しても、私がどうにか取り繕えるわ」皇女宮の食堂で向かい合うなり、リシアは慰めるつもりらしい言葉を口にした。朝日を受けて輝く銀髪も、背筋の伸びた姿勢も相変わらず美しかったが、その説明だけはまったく安心材料になっていない。「四度目はどうなるんだ」「失敗の内容にもよるけれど、決闘になるか、外交問題になるか、その場で毒を飲むことになるわね」「食事へ招待されたはずなのに、どうして命の心配をしなくちゃならないんだ。竜族は毎晩、晩飯を食べるたびに戦争を始めているのか?」「あなたたち人間の貴族だって、食卓では笑顔を浮かべながら政敵の失言を待っているでしょう。竜族は、それを少しだけ分かりやすくしただけよ」少しだけ、という言葉の意味について追及したかったが、リシアの隣に立つ侍女長エヴァが、同情の余地を一切感じさせない顔で三枚の皿を並べたため、俺は口を閉じた。皿の上にはそれぞれ、焼けた石のような黒い肉、青白く発光する魚、そして今にも動きだしそうな赤い木の実が載っている。料理の見本だと説明されなければ、呪術に使う供物だと思っただろう。「第一の禁忌は、主人から出された最初の料理に手をつけないことです。これは『お前が毒を盛ったと知っている』という告発に当たります。食欲がなくても、一口は召し上がってください」エヴァが黒い肉を示す。意識を集中すると、万象通訳が料理に込められた意味を拾い上げた。火山猪の心臓肉。溶岩香辛料を使用。竜族には滋養、人間には発熱、痙攣、場合によっては死亡。「一口で死にそうなんだけど、それでも食べろと?」「ですから、殿下が事前に安全を確認なさいます」「エヴァ」リシアの声が一段低くなった。「余計なことは言わなくていいわ。婚約者を晩餐会の席で死なせれば、私の管理能力まで疑われるもの。これは純粋に政治上の措置よ」『昨日から料理長を三度も呼びつけて、人間が食べられる量まで香辛料を減らさせたなんて知られたら、過保護だと思われる。絶
第8話 皇女宮は俺を夫と認識した『魂約の成立を確認した。新たなる男主人の帰還を歓迎する』 皇女宮から聞こえてきた声は、百年ぶりに待ち人が帰ってきたかのように弾んでいた。 俺には古代宮殿が発する言葉として理解できたが、リシアや法務官シルヴィアにとっては、宮殿全体が突然揺れ、壁や床の魔法文字が一斉に輝き始めたようにしか見えなかったらしい。 応接室の扉がひとりでに開き、廊下に飾られていた花瓶や絵画が次々と移動していく。古びていた銀色の燭台には青白い炎がともり、壁に積もっていた細かな埃まで風にさらわれるように消えた。 長く眠っていた皇女宮そのものが、俺とリシアの魂約をきっかけに目覚めたのだ。「遥人、何が起きている。宮殿は何と言っているのだ」「新しい男主人の帰還を歓迎すると言っている」「男主人だと? おまえは三か月間の婚約者であって、この宮の主人ではない」「俺に言われても困る。そう判断したのは宮殿だ」「ならば、間違っていると伝えろ。おまえは客人として置くのであって、私と同じ権限を与えるつもりはない」「聞こえているか分からないけれど、一応言ってみる」 俺は壁に浮かんでいる魔法文字へ意識を向けた。「皇女宮、俺はこの宮の主人ではない。リシアと三か月限定の婚約契約を結んだだけだ。俺の身分は客分で、宮殿に関する最終的な決定権はリシアにある」 壁の文字が、俺の言葉を考えるようにゆっくりと明滅した。『魂約によって結ばれ、真銀の環を授かった者は、皇女の正式な伴侶である。伴侶は巣を守る男主人として、女主人と同等の権利を持つ』「婚約期間は三か月だ。その後は二人の意思によって解消できる」『三か月後の契約更新については、期限到来時に確認する。現時点では正式な伴侶であり、男主人である』 ずいぶん融通が利かない。「現時点では、俺のことを男主
第7話 恋愛禁止の婚約契約「これ、本当に三か月で解消できる契約なのか」 俺が問いかけると、リシアの肩が明らかに揺れた。 銀色の巻物へ刻まれた古代竜語は、俺の耳へ「二つの魂を一つの巣へ結び、死が二人を分けるときまで続く」と囁いている。どのように都合よく解釈しても、三か月限定の偽装婚約を示す文章には思えなかった。 リシアは俺と目を合わせないまま、机の上へ置いた巻物を箱へ戻そうとした。「今日はもう遅い。詳しい話は、明日、法務官を交えて行えばよい。おまえも疲れていると言っていたではないか」「そうだな。疲れているからこそ、これを三か月の契約だと思って署名していたかもしれない。説明は今聞きたい」「署名させる前には、きちんと説明するつもりだった」「それなら今、説明できるだろう。この契約は、いつまで続くんだ」 リシアは箱へ伸ばしていた手を止めた。 魂語からは、『署名する前には話すつもりだったというのは本当だ。しかし、具体的にいつ話すつもりだったのかと問われれば、答えられない』という後ろめたさが伝わってくる。 黙って契約させるつもりだったわけではないのだろう。ただ、正直に話せば俺が婚約を断るかもしれないと恐れ、説明する時期を先延ばしにしていた。 悪意がないからといって、許されることではなかった。「リシア、俺は王国で、読めない契約書へ何度も署名させられた。勇者一行の一員として登録されたときも、報酬の分配や功績の扱いについて詳しく説明されなかった。共通語へ翻訳された書類は見せられたけれど、原文には、異世界人の功績は王国と勇者へ帰属すると書かれていたんだ」「そのような条項があったのか」「あった。召喚されたばかりの俺は、この世界の文字をほとんど読めなかったし、疑う理由もなかった。後から原文を読めるようになって気づいたけれど、その頃には何年も経っていた。だから、内容を理解できない書類へ署名するのは、もう二度と嫌なんだ」
第6話 皇女からの偽装婚約「遥人。おまえには、私の婚約者になってもらう」 リシアが何を言ったのか、言葉の意味は正確に理解できた。 俺の技能は「万象通訳」であり、聞き慣れない竜族の言葉や始原語であっても、そこに伝えようとする意味がある限り読み違えることはない。それでも、このときばかりは、自分の能力が壊れているのではないかと疑いたくなった。「すまない。転移門を直すために寝ていなかったせいか、今の言葉をうまく理解できなかった。婚約者というのは、竜帝国では別の意味を持つ役職か何かなのか」「おまえが想像しているものと同じだ。将来の結婚を約束した相手、つまり夫となる予定の男を指す」「それなら、聞き間違いじゃなかったらしいな」「最初から、そう言っている」「確認したいんだが、あなたと俺が出会ったのは、昨日だったよな」「正確には、一昨日の夕刻だ。おまえが長く眠っていたので、その分だけ時間が過ぎている」「日数を一日増やしたところで、知り合ったばかりであることは変わらない。しかも俺は人間で、あなたは人間嫌いの竜皇女だ。助けた直後には剣を喉へ向けられ、昨日は所有物と宣言された。そこからどういう順番で考えれば、婚約という結論にたどり着くんだ」「私も好きで、この結論を出したわけではない!」 リシアは声を荒らげた後、廊下に控えている侍従たちへ聞こえたかもしれないと気づき、咳払いでごまかした。 表情だけは冷静さを取り戻したものの、魂から漏れてくる声は混乱したままだった。『もっと落ち着いて説明するつもりだったのに、なぜ最初から言い争いになっているのだ。そもそも、私も好きで考えたわけではないという言い方では、この男との婚約が嫌でたまらないように聞こえるではないか。いや、これは偽装なのだから、嫌でも問題はないはずだ。それなのに、どうして遥人が傷ついた顔をしていないか気になるのだ』 彼女が気にしているほど、俺は傷ついていない。そもそも、
第5話 処刑の代わりに出された条件 竜帝国で迎えた最初の夜、俺は客室と呼ぶには扉の錠が頑丈すぎる部屋へ入れられた。 窓には鉄格子こそないものの、青白く光る細い文字が何重にも刻まれ、触れようとすると「逃亡者を焼却する」という物騒な意味が伝わってくる。扉の外には二人の近衛兵が立ち、部屋の四隅には監視用と思われる水晶まで置かれていた。 家具は立派で、寝台も国境砦で使っていたものより柔らかい。それでも、外へ出る自由がなければ、豪華な牢と呼ぶのが正しいだろう。「少なくとも、雪原で凍死するよりはいいか」 誰に聞かせるでもなく呟き、俺は机の上へ広げられた転移門の記録に目を落とした。 女帝ガルディアが与えた猶予は、明日の正午までである。それまでに古代転移門が動かない原因を突き止め、修復方法を示せなければ、俺は人間王国の間者として処刑される。 しかも、リシアが俺を皇城へ連れ込んだ責任まで問われるらしい。 俺一人の命ならば、どこかで諦めることもできたのかもしれない。しかし、助けた相手まで巻き添えにするとなれば、簡単に失敗するわけにはいかなかった。 記録には、百年以上にわたって転移門を調査した竜族の術者たちの報告が残されている。魔力の供給は正常で、門の石材にも大きな損傷はない。それにもかかわらず、起動させようとすると魔法が逆流し、術者だけを門の外へ弾き飛ばすという。 文字そのものを見なければ、俺にも原因は分からない。 報告書を何度読み返しても同じ結論へ戻り、そろそろ目を休めようとしたとき、扉の向こうから言い争う声が聞こえた。「殿下、さすがに夜も更けております。人間の男が一人でいる部屋へお入りになるなど、いくら監視のためとはいえ、外聞がよろしくありません」「私の所有物を、私が確認して何が悪い。そもそも、私が近くにいなければ、この者が妙な行動を取ったときに止められぬだろう」「でしたら、我々も室内へ同行いたします」「おまえた







